長年ブリッジにしていた部分を、歯のない真ん中をインプラントにし、その両隣の歯に新たにセラミックを個別に被せ直すことに決めたのは2018年1月末。その後、実際の治療に入りました。その治療プロセスと費用について体験談をお伝えします。
今回の治療に至った経緯についてはこちら⇒ ブリッジからインプラントへ (1)~歯のケアを怠った代償は大きい
インプラント治療について
私にとっては初めてのインプラント治療でした。復習の意味で、インプラントについてざっくり説明してみます。
インプラント治療とは?
そもそも「インプラント(implant)」とは英語で、埋め込み、埋め込まれたもの、という意味です。
歯のインプラント治療は、虫歯、歯周病、事故など、何らかの理由で歯を失った後、顎の骨に人工の歯根を埋め込んで、その上に人工の歯を装着する治療です。
ブリッジや入れ歯のように周りの歯を傷つけずに治療ができ、自分の歯と同じような感覚で噛むことができます。
ただし、すべての人がインプラント治療ができるわけではなく、顎の骨の状態や、身体状態が良くない場合(糖尿病・高血圧など)にはできないことがあります。また、治療期間が長い、治療費が高額であることもインプラントの特徴です。
インプラントの技術はこの数十年でさまざまな改良が加えられて、臨床成績が向上しているので、成功率は非常に高くなっています。例えば、インプラント相談事務局によると、インプラントの成功率は、インプラント治療を行う医院のレベルや、部位によっても異なりますが、およそ 97%だそうです。
インプラントの構造
まず、インプラントで使われる基本的なパーツを紹介します。
インプラントは大きく分けて、インプラント体(人工の歯根)・アバットメント(連結部分)・人工の歯(義歯)の3つのパーツで構成されます。
・インプラント体: 顎の骨に埋め込まれるパーツで「フィクスチャー」や「人工歯根」とも呼ばれます。主な素材はチタンです。
・アバットメント: インプラント体と人工歯(義歯)を連結する土台となるパーツで、専用のネジでインプラント体上部に接続させます。
・人工歯(義歯):アバットメントの上に接続される「上部構造」とも呼ばれるパーツです。専用のネジやセメントなどでアバットメント上部に装着します。
インプラント治療の流れ
インプラント治療には1回法と2回法の2つの方法があります。
・1回法: 歯茎を切開して顎の骨にインプラントを埋め込み、アバットメントまたは仮のアバットメントを連結し、その一部を歯茎から出した状態で歯茎を縫合します。そして、インプラントと骨が結合するのを待ってから(3~6ヵ月)、アバットメントの上に義歯を取り付けます。歯茎を切開する外科手術が一回で済みます。
・2回法: 歯茎を切開してインプラントを埋め込んだら、一度歯茎を縫合し閉じます。そして、インプラントと骨が結合するのを待ってから(3~6ヵ月)、再び歯茎を切開して、アバットメントをインプラント体に装着して義歯を取り付けます。歯茎を切開する外科手術を2回行います。
つまり、1回法ではアバットメント装着までを1回で行い、2回法ではその工程を2回に分けて行うことになります。参考までに、1回法には、さらに1ピース型(インプラント体とアバットメントが一体になったパーツを使用)と2ピース型(インプラント体とアバットメント(または仮のアバットメント)の2つのパーツを連結して使用)があります。
2回法は歯茎を切開する外科手術が2回行われますが、1回法は外科手術が1回のみなので、身体への負担が軽く、費用も比較的安くなります。ただし、骨の高さや厚さが不足している場合に骨造成をすると2回法より感染リスクが若干高くなるようです。
私のインプラントは2回法といわれる施術のようでした。
歯科医からは1回法、2回法という説明はありませんでしたが、歯茎を切開してインプラント体を入れ、縫合した後、数ヶ月待ってから、再度歯茎を切ってアバットメントをつけて、義歯を装着しましたので。
2回法のプロセスを簡単に紹介した動画
ブリッジからインプラントへの治療プロセス
今回は、1本をインプラント、両隣の2本をオールセラミックに被せ直すという2つの治療が並行して行われました。
歯科医にオーストラリアと日本を行ったり来たりしている事情を説明し、私の移動予定に合わせて治療プランを組んでもらいました。インプラント体を埋め込んで顎の骨とくっつくまでの治癒期間は少し長めにとることになりましたが、ちょうどオーストラリアにいる期間に消費できたので、タイミングがよかったです。
私の治療プロセスは下記の順に進んでいきました。
1. クリーニング
2. インプラント体埋め込み(1回目外科手術)
↓(翌日)
消毒
↓(1週間後)
抜糸
↓ (翌日)
消毒
↓(約1週間後)
チェック
*オーストラリアに戻る
↓(約4ヶ月後)
*日本帰国
3. アバットメント装着(2回目外科手術) & 両隣の歯2本分のクラウン(被せもの)型取り
4. 両隣の歯2本分のクラウン装着 & インプラント義歯型取り
5. インプラント義歯の装着
インプラント体の埋め込み(2月15日)から義歯の装着(8月3日)まで、6ヶ月弱の期間がかかったことになります。ただし、私はオーストラリアと日本を行ったり来たりしている都合で、インプラント体と骨がくっつくまでの治癒期間を5ヶ月近く置いていますが、通常、下顎の場合は早ければ3ヶ月位の治癒期間で済むらしいので、問題がなければ義歯の装着まではもっと早く完了できると思います。
インプラントは痛い?
2回の外科手術はいずれも局所麻酔でしたが、痛みはほとんど感じませんでした。痛みよりも、恐怖心や不安といった精神的な負担の方が大きかったように感じます。
歯茎を切開してインプラント体を埋め込んで縫合するという、1回目の外科手術が一番負担になると思います。なんといってもドリルで穴を開けるので、その音と振動は直に伝わってきます。それだけで恐怖に感じるものです。
1回目の手術は、消毒などの前後の処置を除けば、時間的にも20分もかからなかったと記憶しています。術後の痛みも腫れもそれほどありませんでしたね。でも精神的な疲れはけっこうありました。
その歯医者では、患者の反応を見ながら治療できるように、通常は目をタオルや眼鏡でカバーすることはしていないのですが、私はいろんな器具が口に入ってギリギリやられるところを見るのも、歯科医や助手と間近に目を合わせるのも気が引けるので、お願いして目をタオルで覆ってもらいました。今思えば、ドリルで穴を開ける音が一番恐怖心をあおるので音が聞こえない方が落ち着けた気がします。
最近は、静脈内鎮静法といって、半分眠ったような状態で無痛治療ができる方法があるようです。別途料金がかかるみたいですが、不安や恐怖心を和らげたい怖がり屋さんにはいいかもしれません。
それにしても、歯の麻酔の注射はいつやってもイヤです。注射のチクリもそうだし、注射後に身体がじゅわーっと熱く重くなっていく感じは、何回やっても慣れません。
今回は、ブリッジを外す前、インプラントの2回の外科手術前、治癒期間後に仮のブリッジを外してアバットメントの取り付けと型取りをする前、仮のブリッジを外して新しいセラミックを被せる前など、何回麻酔をしたことか。たいした量ではないかもしれないけれど、なんか体にも悪い影響がある気がしてなりません。
費用について
インプラント1本と両隣2本のセラミックの被せ直しを並行して治療した代金は次のとおり。
インプラントの治療代は、インプラント体の埋め込み手術をしたときに27万円と、最後の義歯を装着したときに16万2千円を支払ったので、合計43万2千円。
両隣の歯2本のセラミック被せ直し治療には、オールセラミック2本分の代金として19万5千円支払いました。
両方の治療代を合わせると、合計で62万7千円です。インプラントの手術前のCT代、クリーニング代、セラミックの型取り代などもこの金額に含まれていたかどうか調べてみないと分かりませんが、とにかく最低でも約63万円はかかったということです。
日本でもオーストラリアでも、インプラントやセラミックの被せものは保険適用外の歯科治療ですが、オーストラリアで加入しているプライベート保険でなんとか1200ドル(約10万円)カバーできました。
それにしても、短期間で歯だけにこの金額が飛んでいってしまったことを思うと、歯に無神経だった過去を悔やまざるをえません。
改めて予防歯科の重要性を痛感します。