50代が気になる「しゅうかつ」は、就活ではなく「終活」。
就活の人もいるかもしれませんが。
「終活」とは、「人生の終わりのための活動」の略。
人生の終末に向けて葬儀やお墓の準備を始めることが発端でしたが、現在では「人生のエンディングを考えることを通して、自分を見つめ自分らしく生きる活動」であり「残された家族への思いやり」という意味に変わってきているということ。
自分のためでもあり残された家族のためでもあるわけです。
なんとなく聞いたことはあるけれど、この「終活」ということばが胸に響いたのは今年の3月。
日本に帰国した際に、きな男と一緒に滞在していた東京のホテルで見たテレビ番組。
おしどり夫婦でおなじみの、俳優の中尾彬 (74) と池波志乃 (62) 夫妻の終活の取り組みを紹介した番組。
終活を持ちかけたのは奥様の志乃さん。
2007年にご主人の中尾さんが多臓器不全で入院したのがきっかけ。
志乃さんは「(年齢が) 一回り違うんですけど、順番に倒れるかは分からないので」と自身が亡くなった後のご主人を心配。中尾さんも「志乃がいなくなっちゃったら、どうしよう」と、いつかどちらかがいなくなる日を実感したといいます。
2人がこだわったのは「誰にも迷惑を掛けずにいなくなること」。
そのため、すでにお2人は、中尾さんの趣味のアトリエを処分、夫婦の写真1万点を焼却処分、葬式をやらないことを決定、自分が入るお墓は自分で作る、を実行済み。
さらに、志乃さんは「邪魔な死体のやり場に困ったら迷惑をかける」と延命治療を拒否、中尾さんも「本人がいなければ意味がない」と死んだ後のしのぶ会の開催も拒否するなど、着々と準備を進めているようす。
番組内では、2人が暮らすマンションでの生活ぶりも放映されていました。中尾さんの上げ膳据え膳状態と志乃さんの尽くし振り。駄々っ子みたいで扱いやすい、と語る志乃さん、あっぱれです。
この番組では、この夫婦、特に志乃さんの思いっきりの良い決断と潔さに感動。身軽になった2人を見ていると、充足感と余裕さえ感じます。終活の具体的な活動は人それぞれですが、生前にいつ死んでもいい準備をしておくことは今を楽しむためにも意味のあることだと改めて確認。
そして、終活に年齢は関係ないのかなと。
まだ、30代だから、40代だから終活はまだまだ先、と思っていても、事故で明日死ぬ可能性だってあります。年上が先に逝くとは限りません。
死を考えることは恐いかもしれないし、不吉なこと言わないでよと思うかもしれません。
でも、一番恐いのは、なんの覚悟もないままいきなり死と直面すること。
そして、お2人の終活以上にハッとさせられたのは、番組司会者のみのもんたさんのことば。
「相手に先立たれたら」の質問に中尾さんは、「最後ね一言、『ありがとう』って言うか言わないか。かみさんに対しては『ありがとう』よりももっとすごい言葉がないか探している」と語ったことに対し、
みのもんたさんは、「相手がいる間に何回も『ありがとう』と言ってください。自分が後悔しているのは『申し訳ない』『ありがとう』を妻に言えなかったことですから」と中尾さんにアドバイス。
そうだよね、といたく同感。
残された家族に負担がかからないように、生前に物理的なものを処分したり、葬儀や墓、財産分与などの問題を解決しておくことはもちろん大事ですが、終活が残された家族を思いやる活動であるとすれば、その気持ちを自分が生きているうちに、実際に口に出して毎日伝えることが、家族に対する思いやりですよね。
気持ちはあっても、家族同士だと恥ずかしくてなかなか口に出せないっていう人が多いですが、大切な家族だからこそ伝えたいことば。
お互い元気で生活できるうちに、「ありがとう」の感謝の気持ちを何回でも口に出して伝えること。それが終活のスタートのように思います。
毎日何気ないことに「ありがとう」を連発してくれるきな男に感謝。私も負けじと伝えたいです。
中尾彬・池波志乃夫妻の終活本